理事長所信

2012年度 社団法人鶴岡青年会議所 理事長所信

2012年度理事長 渡部 芳幸

2011年3月11日14時46分 東日本大震災が発生。
テレビからは目を疑う映像が飛び込んできた。しかし現実に起きたことである。幾度となく支援のため被災地に足を運びそこで見たもの、それは私の想像を遥かに超えた現状と・・・

強い志があった

はじめに

鶴岡青年会議所は1967年創立以来、「奉仕」「修練」「友情」の三信条のもと諸先輩方がこの地域の先駆者となり、地域振興や青少年育成に取り組み、大きな実績を重ね、昨年45周年を迎えることができました。「明るい豊かな社会を築き上げよう」その熱い志は今もなお、我々に引き継がれております。

昨今の社会情勢、景気を考えると、理想とは程遠い現実があります。我々青年会議所が「今」しなければならないこと、それは何事があってもあきらめない志をもって青年会議所運動を推進することです。

青年会議所がなぜこの地域に存在するのか、その存在とは何か、その点を突き止めて考えて行くと必ず「個人」の存在に行き当たります。なぜならば、組織とは個人の集合体であるからです。

家族、企業、団体、地域社会、国家は、その大小を問わず、どれも最小構成単位は個人であり、個人の集まりで成り立っていると言えます。そうであれば、我々の存在が意義あるものである為には「誰の為に」がキーワードになると考えます。

~本質を見抜くJAYCEEが明日の地域を照らす~

組織をより強くする為には個人の成長が必要不可欠となり、各個人が自己のスキルを上げて行かなければなりません。

スキルとは一般的に技能の事を意味しますが、加えて「人格」が重要になってきます。自分の為ではなく、「誰かの為に」すなわち慈愛の精神が必要です。そのうえで物事を捉えなければなりません。つまり慈愛の精神をもって自己の視野を広げることが重要です。

広い視野から様々な角度、距離で物事を見つめ直すことで本質が見えてきます。自己の満足ではなく、我々JAYCEEが相手の事を思いやる慈愛の精神で青年会議所運動を進めていくことが求められております。

明日の地域を照らす6つの志

本年度、「明るい豊かな社会」を目指す為、「魅力ある鶴岡青年会議所にする志」「地域から頼られる青年会議所になる志」「未来の宝を育成する志」「自己を磨く志」「地域に活力を与える志」「感動を与える志」この6つの志をもって事業を構築してまいります。

【魅力ある鶴岡青年会議所にする志】

鶴岡青年会議所はここ数年でメンバーの2/3が卒業いたします。毎年会員拡大活動を行い、会員を迎え入れておりますが、メンバー数の減少に歯止めがかかっておりません。それが意味する事とは、これからの我々の青年会議所運動の幅が狭められる事です。

第一に事業数が減少します。鶴岡青年会議所には諸先輩方が築き上げてこられた「わんぱく相撲」や「赤川花火大会」などの継続事業がいくつかあります。これらはこの地域に無くてはならない事業であり、これからも更なる発展を目指さなければなりません。

そして、今この地域に求められている新規事業の展開も必要です。しかしながら、数年前と現在とでは、メンバー数が違います。事業費やメンバー各自の負担が増加しております。将来にわたり、今、求められている事業をすべて行うのであれば、少ないメンバー数で行うしかありません。つまりはJAYCEEとして満足な事業を展開できない事が危惧されております。

第二に青年会議所の運営費は私たちメンバーの年会費から賄われております。メンバー数が減少するということは、この運営費減少に直結しております。

青年会議所は人生最後の学び舎だと考えております。教師のいない、自らが率先して行動を起こし、時間、お金を費やし人間磨きをする学び舎です。

馴れ合いではなく、どうしたらよりよい社会が実現出来るのか、どうやったら明るい豊かな社会が実現できるのかを考える「英知」 困難に立ち向かい、率先して行動を起こす「勇気」そして、自らの信念を曲げずに志を一つにする「情熱」。英知・勇気・情熱、どれもこれからの時代必要とされる、欠くことの出来ないものです。

今こそ、この地域の為に会員拡大活動は全力を尽くさなければなりません。その為にもより魅力ある鶴岡青年会議所を目指す志が必要です。

【地域から頼られる青年会議所になる志】

公益法人制度を抜本的に改革するため、2006年3月に「公益法人制度改革関連3法案」が閣議決定され、同年5月に第164回通常国会において法案が成立しました。2008年12月から施行され、移行期間は5年間でありその間に「公益社団法人」「一般社団法人」のどちらかに移行しない場合は解散となります。

公益認定の要件は、公益目的事業支出が全支出の50%以上であることや公益目的事業23事業に該当し、なおかつ、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものでなければならないとされております。

鶴岡青年会議所は「公益社団法人」の道を選んでおり、今まで数多く議論されてきました。今年「公益社団法人」として新たなスタートを迎えます。

制度改革自体は、決して我々の運動の本質を揺るがすものではなく、むしろ自らの運動を見つめ直す機会であると捉えるべきです。常に「この事業は地域に必要なものか」を強く意識しながら、事業そのものの公益性を見つめ直す事を怠らず、地域から頼られ求められる鶴岡青年会議所の確立を目指してまいります。この制度改革に振り回されることなく信念を貫き、本質を見据えた慈愛の精神でLOMを運営してまいります。

【未来の宝を育成する志】

未来の宝とは・・・私が考えるのは「人財」です。私たちが住む地域は自然、歴史、文化に恵まれております。それは自然から与えていただいたもの、先人が我々に伝えてきたものの恩恵があります。そしてそれらをこれから次世代へ伝えていくのは私たち青年の担いです。この「伝えていく」事が重要となってきます。伝えられることができるのは「人間」です。すなわち、先人から伝えられてきた自然、歴史、文化を繁栄させるのも、衰退させるのも、今を生きる私たち次第です。

これまでも、我々は健全な精神育成のために、「わんぱく相撲」などの青少年育成事業を行ってきました。昨年は「赤川花火大会」の翌朝清掃や「希望の光プロジェクト」において、地域の中学生よりボランティア支援をいただき、絆を深めてまいりました。本年は今まで以上にこの地域の明日を担う青少年との交流を持ち、共に活動していくことにより、この地域の未来を担う青少年にOMOIYARIの心を伝播していきます。

【自己を磨く志】

青少年育成に対しても、先ずは我々青年が率先して自己を磨かなければなりません。

昨今の報道を見ると今までの常識というものがいとも簡単に打ち砕かれ、耳を疑う事件や言葉を聞く機会が多いように感じます。これは現代の社会情勢の不安定さ、景気低迷により心にゆとりが無くなり、自信を失った大人が多いからではないでしょうか。

自己を磨く際に我々はアイデンティティを重要視しなければなりません。つまりは、自分は何者であるか、自分の役割・使命を意識し、自己の信念や価値観、そして、なぜ、自分自身がそれらを大切に思うかを意識する事、「自己認識」がまず初めにしなければならないと考えます。

この自己認識、信念・価値観が意識出来ると、能力、行動、環境に変化が起きてきます。 例えば「自分は人の上に立つような器ではない」という自己認識を「自分は人の上に立つことができる人間だ」という自己認識に変化させる事で、今までとは違い堂々とした態度で部下に接することができ(行動レベル)、それによりチームでリーダーシップを発揮することができ(能力レベル)、チームとの信頼関係が築ける(環境レベル)、という変化を起こす事ができます。また同じように、自己認識を「自分は人の上に立たなければならない人間だ」という自己認識に変化させる事により、人の上に立つ為に必要なスキル(能力レベル)を学ぶ機会を設け(行動レベル)、アウトプットすることで身近な人間に相乗効果をもたらし同じスキルを習得する仲間が増える(環境レベル)、という変化をもたらせます。いずれにしても、それぞれのレベルは互いに影響を与え合い、あるレベルでの変化が他のレベルへの変化を生み出します。

我々は地域の青年経済人として、常に高い志を持ち地域経済を繁栄させていかなければなりません。あなたにお尋ね致します。「あなたの存在価値は何ですか」

【地域に活力を与える志】

誰にでも「理想」があります。皆それぞれの理想を目指し、努力をしております。

我々にはこの地域が、これからどの方向へ向かえばよいのか、この地域にとっての理想は何か、を見極めこの地域を創造していくことが必要です。それには、我々単独の情報のみならず、地域の先輩諸兄の意見も十分に取り入れ、まず自分が住んでいる地域を知る事が重要です。防災対策、環境対策、福祉、教育、産業などあらゆる分野の現状を把握し、今後の地域はどうあるべきかを考え、実行に移します。

昨年、鶴岡青年会議所は様々な被災地支援活動を行ってまいりました。しかしながら、被災地が本来求めている支援をしているのか、青年会議所だからこそ出来る災害支援が行われているのか、今一度過去の事例から学び、真摯に受け止め見つめ直す必要があります。

また、行政や各種支援団体との連携をより一層深め、今後起こりうる有事に備える必要があります。それにより自立した防災意識、助け合うコミュニティを確立し、より一層防災や減災に対する意識を高めることが重要です。

我々がこの地域に住む限り、この地域に活力を創造することは非常に重要となってきます。この地域に生まれてよかった、この地域に住んでよかった、この地域を誇りに思う。子供たちがこのように言える地域にしなくてはなりません。

また、外部へも目を向けなくてはなりません。殻に閉じこもることなく広い視野で物事を見つめ、学び、この地域の活力を創造する志が必要です。

【感動を与える志】

感動を人に与えるということは、事業がその人の想像を遥かに超えたものでなければなりません。鶴岡青年会議所が主体となって行っている赤川花火大会は感動の代名詞ともいえる事業です。私たちの先輩諸兄が「子供たちに笑顔を」と始めた地域の為の赤川花火大会は20回の開催回数を超え、地域からの信頼を築き上げ、今では地域のみならず全国に誇れる地域主体の花火大会へと成長いたしました。

昨年は東日本大震災の影響で他地域の花火大会や祭り、イベントが数多く中止となる自粛ムードの中、我々は「開催」の道を選びました。開催するか否かの議論よりも、この状況で開催する為にはどうしたら良いのか、鶴岡青年会議所だから出来る事は何か、の議論に至りました。

なぜ開催の道を選んだのか、それは我々が赤川花火大会を通じて人々に元気と勇気と笑顔を届けるという強い志があることに他なりません。赤川花火大会はこれからも多くの人々に感動を与え続ける為に更なる成長を遂げて行きます。

【結びに】

昨年被災地を訪れた際に避難所のリーダーとお話をする機会がありました。そこで聞いたリーダーの言葉はリアルで、重く私に伝わりました。災害直後の事、一晩漂流した事、津波がひいた後の街の様子、避難所でのコミュニティの事、それは誰もが予測していなかった事態に人はどのような行動を取ってきたのか。報道で伝えきれない事が被災地では起きておりました。

「頑張ろう日本 頑張ろう東北」これは私たちに伝えるメッセージです。被災地の方は言われなくても頑張っています。全てを失った方は何を頑張って良いのか分かりません。我々が想像している以上に被災地の方は前を向いています。必ず復興するという強い志がありました。

この度の震災で改めて考えさせられる事が多々ありました。もしこの地域に同じ規模の災害が起きたら、私はどんな行動を起こすだろう。あなたはどんな行動を起こしますか。 そして、周りにどんな事をしてもらいたいですか。そこに人間の本質があると感じます。

まずは意識することから始まります。視野を広げることが必要です。人は決して弱くありません。何より周りには志同じくする仲間がいます。自己の成長こそが鶴岡青年会議所の成長になり、志高いメンバーが集う鶴岡青年会議所になれば「明るい豊かな社会」に近づいていきます。

この地域を造るのは我々です。さあ志高く、確かな一歩前へ進んで行きましょう。